テントがたくさん… 久しぶりのブラジル

8月、久しぶりにブラジルへ行ってきた。2022年はブラジル独立200周年。けれども出会った人たちは「200年?」とつれなく、お祝いムードもない。関心事はもっぱら10月に控えた大統領や上院下院議員などの大型選挙。それに、「物価が上がってたいへん」と口々に話していた。日々の暮らしにやりくりにと、独立を祝うどころではないのもうなずけた。そして、大都市サンパウロで目にしたのは、あちこちでの改修工事に、数多くの小さなキャンピング・テント。新型コロナ感染症の影響などで、働き口や行き場を失った人たちの路上の住まい。中心部の街路では、“ただならぬ”雰囲気を漂わせた大勢の人たちに行きあった。どこまでつづくのかという長い列をつくって。それは「炊き出し」に並ぶ人たちだった。かつて南米に渡った人から「あなたたちは本当に<飢える>をいう経験がないでしょ」と言われたことを思い出した。本当の<飢え>というものを知らずして、“ただならぬ”状況を想像するしかない。テントはサンパウロ中心の目抜き通りにも。大企業や富の象徴たる高層ビルが建ち並ぶアヴェニーダ・パウリスタ。その華やかな大通りのわきの、地べたに貼られたテントたち。じっと見てはいけない気がしながら、その横を通りすぎるとき、ひとつのテントの中からそっと差し出される手が見えた。その手は出入口のファスナーをゆっくりと閉じる。人の尊厳とはなにか…… 天をあおぐと、まぶしい光がふり注ぐ。けれど冬の夜の路上はさぞかし冷えるだろう。テントの住民たちに、ときどき仲間たちとお弁当を差し入れしているというサンパウロの友人は、路上暮らしではテントがないと本当につらいらしい、と言っていた。報道によると、飢餓状態の人たちは全国で3千万人にのぼるという。人々から助け合いの声が聞こえたことが救いに思えた。

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