「夢を解き放とう」〜リオのストリートアートから

 リオの下町を歩いていたとき、通りに面した壁に、ひときわ目を引くものがあった。色鮮やかなデザイン、さらに、あれ?っと目をとめる文字が。「夢を解き放とう」(Liberte seus sonhos)。そして、その下には、その呼びかけに応えるかのように、誰かしらが自分の夢を書きこんでいたのだった。書いては消され、さらに上書きされているもの、消えかかっているもの… いつ、誰が、というのはわからない。

 その中に、3つほど同じ単語が並ぶ。“億万長者”。やっぱりそうくるか…  そして、“日本に住む”と読めなくもない文字も。まさか、読み違いかもしれない。さらに、“幸せになる”、“金持ちになる”。それから、“永遠を探すこと”。奥が深いなあ。そして“隣人を助けること”などが並ぶ。

 この「夢を解き放とう」というのは、どうやら一つのムーヴメントでもあるらしい。のちにネットでみると、“空いている壁を利用した町と人とをつなぐインタラクティブな運動”とあった。たまたま、私がこの壁面を見たのは、バスが爆音を立てて、排気ガスを撒き散らす騒がしい通り。そんな街角で出あったのが、見知らぬ人たちが交差し生み出したコラボ。なんだか、世の中、捨てたもんじゃないと思えたりもした。

 ブラジルの街には、あちこちにグラフィティがある。落書きからストリートアートの類まで。以前、訪れたスラムの一つの地区も、入り組んだ路地に彩があふれていた。赤や黄、水色にピンク。緑の流線に踊りでる花や鳥。路地を曲がると現われるファンタジーの世界。

 そして、そこのコミュニティ・スタッフの青年は、「こんなアートプロジェクトが実現するとは思ってもみなかった」と言う。自分たちが暮らす家の壁にグラフィティを描いてもらう。そのアイデアに協力の輪が広がり、短期間に国内外からアーティストがここを訪れて描いてくれたのだと。「まったくの奇跡だったよ」。そして、グラフィティ・ストリートが生まれていたのだった。

 その後、ブラジル政治経済の混乱がつづいて、そのコミュニティを含む母体の事業の数々が打ち切られたという風の便りを聞いた。けれども、また、時がめぐり、夢が花咲く時節到来、となることもあるのではと、どこか楽観的な期待が消えることはない。そう思えるのは、それぞれが夢を放ち、人と人とがつながって、何かしらが生まれる、そんな場面に出会う機会がこれまでに何度もあったからかもしれない。

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