選挙前のブラジル

 久しぶりにブラジルへ行ってきた8月。10月の大型選挙を控えて、リオでは、街角のキオスクなどで、キャンペーン・グッズが売られていた。目立ったのは、大統領2大候補、現職ボルソナーロと元大統領ルーラのもの(選挙の結果、新大統領はルーラに決定)。バッチやシールの小物から、大型バナーなど。タオルなどもあって、それが、洗濯ピンで吊るしてある。なんだこれは? というような下着に顔のデザインまでも。

 街路でグッズを販売している出店をのぞいてみる。一緒にいた地元の人が売り子の青年に、あなたはどう? 誰か支持しているの? と問いかける。すると、いまの政治を理由付きでコメント。30前後かと思いきや、なんと15才だという。まだ選挙権もない。なのに、自分の頭で考えている。課題だらけに見える社会だけれど、思わず希望を感じてしまう。

 大統領2大候補をめぐる分断は激しくなっていた。タクシーに乗ったとき、ドライバーに何気なくきいてみる。「大統領はだれがいいと思う?」ふつうのタクシーの、中年らしき白人男性ドライバーは、すかさず「ボルソナーロ」と答えた。「これまでで、一番、誠実な人物だよ」。その一方で、流行りのUberに乗車したとき、混血系らしき中年男性にきく。すると、「ルーラしか選択肢がない」という。また、あるレストランでは、白人の中年男性が、ボルソナーロがどんなに正しいかを、同じテーブルについていた若者たちに得々と声をあげて話していた。この日は8月の第2日曜日、ブラジルの「父の日」。一緒に食事に出た子供たちに説いているのだろうか。また、「ワクチンの注射は“左”はだめ、“右”腕にするのがあたり前という医者もいるんだから」、だとか、長年のホームドクターから娘にクロロキンを処方すると言われて呆れた、という声も聞いた。それぞれの言葉に感情の波が乗っていることに「分断」が強まっているようにも感じた。それでも、人々が自分ごととして社会のあり方に参加しているようにも思えた。

 選挙結果がでたいまは、年明けから始まる変化に興味しんしん。

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