久しぶりにブラジルに行った2022年8月。リオ滞在はじめ一週間くらいは、ぶっつづけで曇りと雨だった。どんよりとして撮影にはいまひとつ。そんなとき、広場でとあるイベントがあると耳にして出かけていった。するとそれは、「民主主義を守ろう」というようなデモの類だった。「みんなに教育を」ちょっとはにかみながらプラカードを掲げる、デモ初デビューのような高校生たちの姿も。この8月11日は学生の日だという。仲間たちと上げる若い声がどんよりした天気を突き抜けた。
宿に戻るとテレビではひっきりなしに中継映像が流れていた。それは、この8月11日に、サンパウロ大学法学部で開かれていた民主主義を守ろうという集会のようす。ボルソナロ大統領が選挙の電子投票制度に疑問を投げかける発言を繰り返し、10月の大統領選で負けても結果を受け入れない可能性や、民主主義が危ういという危機感があったからのよう。この場から大学人や司法関係者らが発起した声明に集まった署名は100万人以上。全国各地でも連動して大規模なデモがあった。そもそもブラジルでは、8月11日は民主主義にまつわる象徴的な日だとのこと。1827年ブラジルで法律学部が初めて創設された日であり、1977年の軍事政権に対するマニフェスト声明を出した日であり、1992年コロル時代に初めて大々的なデモが行われた日…… 歴史を重ねて新しい時代へと進んでいるような“熱量”を感じた日だった。