秋晴れの休日、大阪の生野区で子どもたちとの写真教室に参加した。撮影場所は御勝山南公園。黄色、オレンジに赤。紅葉が色あざやかに、青空に、そして、枯葉の地に映えていた。
落ち葉を集めては放ったり、水に浮かべたり。シャッターを押す子どもたちも、一瞬にシンクロして、創作のひとときを楽しんでいる様子だった。
大通りに面したこの公園は、よく見かけるような、遊具やベンチの備わった、街中の“ふつう”の広場。秋の穏やかな日差しのもと、くつろぐ人がいたり、はしゃぐ子どもを見守る家族連れや、集って興じる年配の人たちもいたりして、憩いの場はいたってのどか。ただ、この場所は“ふつう”とはちょっと違うことを後になって知った。
大通りを挟んだ向こう側には、御勝山古墳という史跡がある。といっても、樹々が茂り、鉄柵に囲まれて、その全貌はわからない。こんもりとした丘がうかがわれるのみ。古墳は5世紀頃の前方後円古墳だったそうで、丸みのある丘はその後円部分。そして、現在の公園は、かつての古墳の前方、古墳の四角い敷地に当たるというのだった。
てっきり古墳は柵の中だけだと思っていたら、この公園の土地自体が古墳の一部だったとは… これまで何度か訪れていたのに。写真教室を終えて場所をネットで再確認していたとき、ふとクリックしたページにその記載があったのだった。
そして、時を同じくして、たまたま見たテレビ番組の言葉に行き当たった。それは、建築家の田根剛氏が建築を考えるにあたって「場所の記憶」を大切にしている、という発言だった。子どもたちと秋日をともにしたあの公園は、かつて古墳だった… その大切なことに気がつかなかったちょっと苦い思いと、知ろうとすること、知ることで、何か出あうものも、表現するものも違ってくるのではないかという思いが増した。
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現在、生野区は少子高齢化が進んでいるという。日本全体がそういう状況にあるとはいえ、まさか大都市大阪の真ん中で… 。地元の方々の話でさらにびっくりしたことには、近隣の小学校が統廃合され、中でも2つの小学校の跡地に、元の校舎を活かして、インターナショナルスクールがオープンしたという。1つはシンガポール発の学校で、シンガポールやサウジアラビア、インドにキャンパスがあり、日本では生野が初めて。生野区はもともと日本で外国籍の人が一番多い自治体。その下地が生かされてのことにはちがいない。
ものごとが移り変わるスピードはめまぐるしい。動いていく新しい世界の“いま”を感じるのもよし、けれど同時に、その地に重ねられてきた層を深く探ることもよし。そうすると、きっとあらたな“いま”がより厚みのあるものになるにちがいない。