龍雲のごとく

昨秋のある午後、青空にふしぎなものが“いた”。空がひらけたところを歩きまわり、手持ちのスマホで写す。うねるように長く伸びる白い雲。気流にのって勢いよく駆動しているかのよう。まるで天空を自在に泳ぎゆく生きものみたい。それは、そう、龍雲、ドラゴン・クラウドと呼んでもいいだろう。

龍みたいな雲。そう思ってシャッターを押したことは、アマゾン奥地でも。そう見えただけ、思い込みだよ。そんな声も頭の中で響いたけれど、龍がこっちを見ているように感じられたのだった。

名前に“ドラゴン”がつくものにトンボがいる。トンボは英語でDragonflyドラゴン・フライ。なぜトンボがドラゴンなのか。由来には諸説あるらしい。長い体と大きな翼とか、素早く動いて昆虫を食べる様子とか、古い呼び名の言葉からとか…。そして、トンボは、北米の先住民をはじめ、世界の各地で、変化の象徴とされているという。幼虫から成虫へと劇的に変化することもその一因とか。

すると、頭の中で音楽が鳴り出した。「Dragonfly」と題されたロックの一曲(Frank Marino and Mahogany Rush)。かなり昔、歌詞を知らずにただただ聴いて記憶に刻まれた曲。ひとしきり耳から脳内に重低音とギターの旋律が駆け巡ると、錆びついていたエンジンが動き出す感じがした。

当時、歌詞は聞き流していたけれど、どうやら比喩的で象徴的な言葉で、生死や運命とか、時空を超えたものを語っているようだ。そして、タイトルのトンボは、変化の導き手であるかのように。

2024年、辰年。年が明けた年頭から災害と事故がつづいた。瓦礫と化した家並の映像。その前でやっと絞り出される声と嗚咽。なんということだろう。人々の悲しみに言葉がない。そして、ガザなどの戦地で泣き叫んでいた子どもたちの映像も頭の中でよみがえってくる。なんということだろう。胸がしめつけられるのに、なすすべがない… 

辰年は「変革(転機)」の年だという。干支というのは、12ある十二支(じゅうにし)と10ある十干(じっかん)とが組み合わさったもの。その組み合わせの甲辰から、変化のある年ということらしい。ならば、何よりもまず、ちょっとしたことでも自ら動いてみようか。
自らに変化が起きるかもしれないし、「希望」という言葉が押しつぶされそうなとき、感じ方や考えが変わってくるかもしれないから。

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