アマゾンを訪ねて〜30年ぶりのシングー川流域 その2・森と先住民の人たち

2025年、NPO法人の熱帯森林保護団体(RFJ)に同行して、30年ぶりに、ブラジルのマットグロッソ州、シングー川流域を再訪した。数回に分けてレポートします(撮影協力:RFJ)。   

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*本記事は日本ブラジル中央協会のブラジル特報2026年1月号、熱帯森林保護団体ニュースレターに寄稿した内容をベースに当web用に再構成しています。

森林破壊が拡大し、大規模な山火事も発生しているアマゾン。先住民の人たちはどうしているのだろうか。広大なアマゾンでは、違法開発や災害など危機に直面している地域もある。上空から見ると緑の大地が広がるシングー先住民族公園内はどうだろうか……

カラパロ族の村では、熱帯森林保護団体(RFJ)が支援してきた養蜂事業の現場に居合わせた。炎天下、防護服をまとって着ぐるみの作業は、まるで蒸し風呂での労働。黒いカメラのまわりにブンブンと大群が押し寄せる。

ピキとかカジューとか季節の花がいい時期で、巣箱には蜜がたっぷり。
前年から養蜂を始めたという村人は、設置した巣箱が順調で、これから巣箱を増やすんだと、やる気に満ちていた。

防護服が不要な、刺さないハチもいる。熱帯、亜熱帯にのみ生息する、針がないハリナシバチ。希少価値の高い蜂蜜がとれる。ここにはここ特有の種類が生息している。羽音から聴き分ける長老もいるという。

畑の隅の倒木の、数ミリの穴から出入りする小さなハチもいた。まるで小バエのようにも見える。村の養蜂家は幹を削って巣を取り出し、養蜂箱に入れ替えた。畑の主の家族も養蜂に参加するそうだ。

村にいた時だけでも、ハリナシバチ3種の養蜂箱を新調していた。その一つは村の養蜂リーダーも初めてという種類。見つけたのは村の女性だった。斜めに傾いた幹を削ると、長さ1メートルほどにもなる巣が出てきた。一部を切り出し巣箱に入れて、ハチたちが棲家にするのを待つ。採れたての蜂蜜をいくつか味見させてもらうと、さやわかな花の香りがするもの、酸味が引き立つものなど、それぞれの味わいがあった。

マチプ村では、すでに収穫した蜂蜜を売っていた。村の集会で、養蜂は自然を大切にできるし、ハチが働いたものからお金になる、と言う声に、あらたに参加したいと村人の声があがった。小さな営みにちがいないけれど、地域のスペシャルな産物。人と自然が持ちつ持たれつ、未来につなぐ取り組みにちがいない。

ただ、ここにも危険が迫る。地域周辺部の大規模農業による農薬の影響をまぬがれないと、養蜂の専門家は言う。

シングー先住民公園の北部に隣接するカヤポ族の地域も再訪した。
30年前に訪れたときは、新しく村を作ろうと、一家族だけがいたピアラス。ポツンとある間口の空いた監視小屋にハンモックを吊り、ジャガーに怯えて夜を明かした。


それが今は、リーダーたちが住まい、大統領もが訪れるような拠点的な村になっていた。10年ほど前からRFJが支援している先住民の消防団もあり、組織化が進められていた。2024年の乾季には大規模な山火事が発生、村に火煙が迫った。消防隊員の一人が命を落とし、多数の村人が健康被害にあった。火災から一年、黒焦げた木々が残るなかで、消防団はブラジル環境・再生可能天然資源院(IBAMA)と連携して、体制を強化していた。

予防と監視、消火に備えるため、どこで火災が起きているかわかるアプリも活用する。スマホ自体は先住民の誰もが手に、私よりずっと巧みに使っていた。電気もWi-Fiも、訪れた先住民のどの村にも普及。ディーゼル発電を備えつつ、ソーラーパネルと蓄電池のようなセットが各戸についている村もあった。政府の「すべての人に電気(Luz para Todos)」事業の果実だろうか。Wi-Fiは、つながり具合に良し悪しがありつつ、スターリンクを使っている人もいた。

興味深いプロジェクトの一つはブラジルのNPOシングー・シード・ネットワーク(Associação Rede de Sementes do Xingu)が主体となった種のプロジェクト。アマゾンやセラードの人々が在来種樹木のタネを収集して活用、森林再生を促すというもの。村で目立つ錠前付きの堅牢な建物はタネの倉庫だった。タネは200種以上もあり、まぜて地面にまくことで、多種多様な樹木が育つ森づくり。自分たちの土地を守りながら、生計の助けとなり、担い手が多い女性の社会的向上につながる。生物多様性の保全モデルとして、国内外から評価されているという。ピアラスを訪れていたプロジェクト・スタッフの生物学者に、長老が幼いころの樹木の思い出を話していた。

ピアラスに滞在中、見かけないバスが広場について、村人が集まっていた。先住民女性たち一行が、片道30時間ほどかけて、首都ブラジリアに行って戻ってきたのだった。第1回ブラジル先住民女性会議に参加、抗議の行進をしてきたのだという。全国から5千人もの先住民女性が集った、その議題の一つは、アマゾン熱帯林の破壊を抑えてきた規制を緩和させる法案への抗議。後日、大統領は署名し、法案を成立させた。ただし、部分的に拒否権を発動し無効化。最悪の事態は回避されたが、巨大開発による環境破壊の可能性は残されている。それでも、初めての先住民女性会議は、先住民省と女性省、先住民女性の全国的連携組織による共同主催で、女性大臣たちも参加した。このような動きの積み重ねによって、あらたな変化が生まれるのではと期待するのは楽観的過ぎるだろうか。

カヤポ族の村から村へ向かう途中、土地が黒焦げた、前年の山火事の名残があった。伝統的な野焼きの風習は、森を管理し維持するための知恵と技術だが、それが通用しなくなってきているともいう。雨が降る時期になっても雨が降らない。極度な乾燥に干ばつ。今までにない気候や環境の変化、川の水の減少……。

カポト村では、カヤポ族のリーダーの名を冠したラオニ協会の主催で集会が開かれていた。前年の火事被害の地図を見せながら、先住民女性の幹部が説明する。
野焼きの伝統もこのままでいいのか。村の集会で女性幹部が呼びかけた。村にも消防団を作りたい。小規模からはじめて、消火設備や人員養成、防火対策を整備していく。それには資金がいるが、外部の支援なしでは実現できない。そのためにまず、村のみんなが理解して協力してほしい。リーダーだけじゃない。大人から子供まで、男も女も、保健や教育にかかわる人たちも、すべてだ、と。

村々では、長年にわたり先住民の活動を支え、辛苦をともにしてきた看護士さんや専門家たちにも出会った。また、遠く離れた日本からアマゾンの奥地に足を運び、40年近く支援活動をつづけているRFJの南代表に、先住民の長老やリーダーたちをはじめ、人々の信頼はとても厚い。そして、国内外の支援とともに、先住民の人たち自らが足場を築き、活動の幅を広げているようにも感じた。

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